子供をご褒美で釣っていいか(1)の続きです。
遠い将来の「自分のため」ではなく「目先の利益」の方が人間にとっては重要なので、ご褒美をあげるのはその人間の性質を利用した方法です。
そこで
・ご褒美をあげることは効果的なのか。また、どんなご褒美の上げ方が効果的なのか。
・ご褒美をあげると勉強が楽しいという気持ちがなくなってしまうのではないか。
・ご褒美がなくなると勉強しなくなってしまうのではないか。
ということを考えていきましょう。
この問題に答えを与えたのがハーバード大学のフライヤー教授です。
(1)ご褒美をあげることは効果的なのか。また、どんなご褒美の上げ方が効果的なのか。
フライヤー教授は、
「テストで良い点をとればご褒美をあげます」
という結果にご褒美をあげるグループと
「勉強すればご褒美をあげます」
という過程にご褒美をあげるグループを用意して両者のテストの点数を比べてみました。
皆さんはどちらが効果的だと思いますか。
結論は「勉強すればご褒美をあげます」という過程にご褒美をあげたグループの方がテストの点数が高かったそうです。
そして「テストで良い点をとればご褒美をあげます」という結果にご褒美をあげるグループは、ご褒美をあげないグループとテストの点数は変わりませんでした。
この理由として、テストで良い点をとる方法を理解していない場合、まずは勉強させること、勉強の方法を教えることが重要だとしています。
ということはもちろん、間違った漢字を延々と書き取りしているとか、間違った計算方法でとにもかくにも1時間勉強したとかではなくご褒美をあげるにしてもやはり親か代わりになる人が見てあげる必要がありそうです。
(2)ご褒美をあげると勉強が楽しいという気持ちがなくなってしまうのではないか。
次に、ご褒美をあげて勉強させたグループと何もしないグループを比べてみました。
どちらも勉強が楽しいと答えた人の割合に変化はないということです。
勉強が楽しいと思う人は、ご褒美をもらおうともらわまいと楽しいと思い、楽しくない人はご褒美をもらおうともらわまいと楽しくないと思うということでしょうか。
(3)ご褒美がなくなると勉強しなくなってしまうのではないか。
これを確かめるために、ご褒美をあげたグループとあげないグループの1年後のテストの結果を比較してみました。
両方のグループのテストの点は同じでした。
つまり、ご褒美をやめてしまうと勉強する人はするし、しない人はしないという状態に戻ってしまうということです。
最後の結果が残念ですが、フライヤー教授はこういっています。
「短期的な効果が消えてしまっても長期的な効果まで消えてしまうわけではない。
例えば 幼稚園で良い教育をした人とそうでない人を比べた研究がある。
幼稚園で良い教育をした人は、学校に行ってからの試験の点数が良くなくても大人になってからの収入が多い。
その理由は、この幼稚園では忍耐や仕事の倫理などを教えたからだ。」
としています。
それでは、勉強よりも忍耐や仕事の倫理などを教えた方がいいのではないか、とか、ご褒美を与えて勉強させることで忍耐や仕事の倫理などは教えることができたのか、とか疑問が生じ、この点はややこじつけのような気がします。
しかし勉強しなくて困っているお子さんにはご褒美をあげてみる、というのも試してみる価値はあるかもしれません。
ただし、過程にご褒美をあげることと、ご褒美をあげなくなったら勉強はしなくなるということに注意してください。
参考文献
Bradley M. Allan and Roland G. Fryer, Jr.(2011)
”The Power and Pitfalls of Education Incentives"
Brookings Institution, hamilton Project
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